
お気に入りの鉢植えに水やりをしていて、植物に異常が感じられたとき、あなたならどうしますか?
多くの場合、肥料を追加したり、日差しを当てたりするでしょう。
しかし、それでは改善できないかもしれません。
改善のヒントが「土」にあるかもしれないからです。
この記事では、鉢植えの土の異常や改善策、土の種類などを解説していきます。
ぜひ、参考にして、鉢植えの状態を確認してみてください。
鉢植えに水が染み込まない原因と対策3選
鉢植えに水が染み込まない原因を見ていきましょう。
1:土が乾燥しすぎている

まず土が乾燥しすぎている可能性を疑いましょう。
保水性が高い素材(ピートモスやバーミキュライト)は、完全に乾燥すると水をはじきやすくなります。
また、乾燥がひどくなると土の粒子が強く引き合い、水が入り込む隙間を失い水の浸透を妨げます。
完全に乾いた雑巾がなかなか水を吸えない状態をイメージしてください。
対策は、乾燥した表面の土を剥がして、保水性と通気性を高めるために有機質の土を混ぜることです。
混ぜたあとすぐに植え付けを行っても問題ありませんが、2週間程度おいてから植え付けすると馴染みが良くなり、植物の根が張りやすいです。
乾燥しやすい場所では、直射日光を避け、風通しの良い場所に移動させましょう。
2:根詰まり

次に考えられるのは、根詰まりです。
鉢の中で根がいっぱいになって、水の吸い込みを妨げている可能性があるのでチェックしてみて下さい。
根詰まりを起こすと、根が密集しすぎて土の隙間が少なくなり、水や空気が通りにくくなります。
そのため土に水が染み込まなくなる現象が起こるのです。
根詰まりのサインは以下の通り。
- 鉢底から根が見える
- 水やり後すぐに水が流れてしまう
- 水が土に染み込みにくい
- 葉が黄色くなったり枯れたりする
- 鉢にヒビが入る
対策として、植え替えや土をかき回して根をほどく、根を切る方法があります。
植え替えをする場合、一回り大きい鉢に植え替えると再び根が成長できます。
植え替えの際には根を軽くほぐしたり、古い根や長い根を切り取ってください。
これにより根の成長を促せます。
3:土の質

土の質により、水が染み込みにくくなることがあります。
粘土質が多く含まれる土は、保水性が高すぎる場合や、土が乾燥しすぎて撥水性を持つようになった場合、水をはじきやすくなってしまいます。
粘土質の土は保水力が高く、粒子が細かいため雨が降っても地面に浸透しづらい性質がありますので対策として、土の配合を検討してください。
砂や腐葉土を混ぜると土の粒子間に隙間をつくり、水はけや通気性を改善できます。
粘土質の土は保水性が高いため、根腐れになる可能性が高いので上記のような対策が必要です。
鉢植えに水を染み込ませるための水やりのコツ

鉢植えの水やりのコツは土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与えることです。
水やりのタイミングは、以下の通り。
- 土を表面から触って乾いている
- 鉢が軽くなった
- 葉が萎れている
- 元気がなくなっている
水やり後受け皿にたまった水は根腐れの原因になるため必ず捨てるようにしましょう。
夏は特に、朝夕の涼しい時間帯に水やりを行います。
温まった水は根を傷つけたり、水中の酸素濃度を低下させ、根腐れの原因になるため汲み置きの水の使用は控えます。
冬は生育が鈍るので、水やりの回数を減らしてください。
水やりと一緒に葉水を与えるのも効果的です。
葉の乾燥を防ぎ病害虫の予防につながります。
季節や環境によって水やりの頻度は調節しましょう。
水を染み込ませる鉢植えの土づくりの基本5選
ガーデニングや鉢植えの土づくりの基本についてご紹介します。
1:土づくりの基本

鉢植え用の土は、基本用土と補助用土の二つを混ぜ合わせて作るのが基本です。
基本用土とは、土壌の50%以上を構成する土のことで、通気性、保水性、保肥性を高めることが目的で肥料成分は含みません。
一方補助用土は、基本用土に混ぜ合わせて使います。
栽培する特定の植物に合わせて通気性などをさらに整えるとともに、肥料成分を補充する役割もあります。
| 基本用土+補助用土=培養土 |
培養土とは特定の植物を栽培する目的で、この基本用土と補助用土を混ぜ合わせて作られた土のことです。
ガーデニング用には汎用的な培養土が売られていることが多いです。
中には観葉植物用、挿し木・種まき用といった専用の培養土もありますので目的に合ったものを選びましょう。
2:根を伸ばすために適した深さ、硬さ

植物の根が十分に伸び、養分を吸収しやすくするために、土を深く耕し、柔らかくしましょう。
ガーデニングや園芸では粘土質と砂の中間ほどの手触りの土が好ましく、フカフカの状態になるまで耕すと根はより張りやすくなります。
フカフカの土は、団粒構造という小さな粒が集まった状態であり、水や空気の通り道が確保され、植物の生育に適した環境をつくります。
根は土から栄養や水分を吸収して、茎や葉を支える役割を果たすために土の中でしっかり張り、安定感を保つことが重要とされています。
3:保水性・排水性
水分を一時的に保持しておく能力と、排水能力が高いことも重要です。
保水性と排水性は逆の能力を持っているため矛盾しているように思えますが、植物を育てる上では保水性と排水性は重要です。
水はけがよすぎると乾燥しやすく、根は水分を吸収できません。
ただし、保水性が高く湿りやすい状態だと根は酸素を吸収できずに腐ってしまいます。
このような理由からガーデニングや園芸では保水性と排水性の両方を兼ね備えた土づくりが大切なのです。
4:保肥性
保肥性とは文字通り「肥料を保つ能力」のことです。
保肥性が高いと、水はけが良い土であっても肥料が流れ出ることを防ぎ、安定して植物に肥料を供給できます。
保肥性が低く肥料を与えすぎてしまうと根腐れなどのトラブルに陥りかねません。
保肥性が高い土には有機物や粘土質の成分が多いという特徴があります。
有機物や粘土質の成分が、肥料成分を吸着しやすいためです。
このように、排水性と保水性に加えて保肥性も土づくりには重要なので覚えておきましょう。
5:適度な酸度(Ph)
肥料も水もしっかりやっているのに「育ちが悪い」と感じたら、土の酸度(Ph)が偏っているかもしれません。
水と同様に土にも酸性とアルカリ性があり、植物を育てるにはこの酸度がどちらかに偏るのは良くないです。
一般的に多くの植物は「中性〜弱酸性」の土を好むと言われています。
酸度が偏っている場合、使用する土壌改良材は下記の通り。
| 酸度(Ph) | 使用する土壌改良材 |
| 酸性 | 石灰質肥料(苦土石炭、消石炭、有機石灰など) |
| アルカリ性 | 硫黄などの酸性資材や、ピートモスなど |
原産地によっては弱酸性を好む植物もあれば、弱アルカリ性の土で成長する植物もあります。
そのため、育てたい植物がどのような土を好むかリサーチし、適度な酸度に調節しましょう。
鉢植えに水が染み込みやすい土作りをするための土の種類
次に土づくりで気になる土の種類を見ていきましょう。
土は大きく分けて有機質の土・無機質の土の2種類に分かれます。
有機質の土

有機質の土は植物の遺骸や微生物の死骸など、有機物が分解してできた土壌です。
保水力や保肥力が高く、植物の生育を促進する効果を持ちます。
一方で、粘土質で有機物が多く水はけが悪いため、虫が繁殖しやすい環境であり、注意しなければなりません。
さらに、有機物は微生物によって分解されるため、使い続けると土の成分が変化し、劣化が早くなるデメリットがあります。
黒土
黒土とは黒色で火山灰と有機物が混ざりあった土です。
腐植質を多く含み、落ち葉や枯れ木などが分解された有機物を含んでいます。
一般的に畑用の土として知られており、保肥性・保水性に優れていますが、黒土そのものに含まれている肥料成分は少ないため、肥料成分を含む土と混ぜて使用しましょう。
黒土は踏むと「ボコボコ」「ボクボク」と音を発するため別名「黒ボコ」「黒ボク」と呼ばれることがあります。
基本用土として使用されています。
腐葉土
腐葉土は落ち葉がミミズや微生物、バクテリアなどにより分解・発酵されて土状になったものです。
堆肥の一種ですが、堆肥と原材料が違い栄養分が少ないため肥料としてではなく、土壌改良材として使用します。
腐葉土は補助用土として赤玉土や黒土といった基本用土と混ぜ合わせて使用しましょう。
堆肥
堆肥は動植物の排泄物や落ち葉などが堆積・分解されたもので、肥料分を多く含み土壌改善効果があります。
堆肥を過剰に施用すると、窒素過多になり生育不良の原因となるため適量を守りましょう。
堆肥中の窒素は、土壌微生物によって分解されて植物が利用できる形に変わりますが、分解が追いつかないと土壌に窒素が蓄積され窒素過多の原因になるため注意が必要です。
排水性を改善するとこれを防げます。
ピートモス
ピートモスとは湿地などに堆積した水苔などが分解されたもので、保水性・保肥性に優れており、見た目は腐葉土を細かくした粉状です。
このピートモスが生成されるのは湿った環境であるため、腐葉土とは分解過程も異なり、強い酸性の性質の土です。
無機質の土

無機質の土は、鉱物や火山灰などの無機物を原料とする土壌改良材や培養土のことです。
有機質の土に比べ、通気性や排水性が良く根腐れしづらく、虫やカビが発生しにくいため清潔な状態を維持しやすいのが特徴です。
観葉植物や多肉植物、挿し木など様々な植物の育成に利用でき、根腐れしやすい植物や、虫の発生を抑えたい場合に有効です。
一方で有機質土に比べて成長がゆっくりで、肥料持ちが悪いため、水やりや肥料の頻度を調整しましょう。
赤玉土
赤玉土は火山灰が堆積・風化してできた赤みを帯びた土で、粒状に加工されたものです。
水はけがよく、通気性も高いうえ肥料成分を含んでいないため、虫や菌が寄り付かない清潔な土です。
大粒・中粒・小粒・極小粒・細粒などに分けて販売されていますので用途に合わせて使用しましょう。
基本用土、挿し木用の土として用いられることが多いですが使い続けると崩れることもあります。
鹿沼土
鹿沼土は軽石質で、表面に多くの孔(あな)があいており、病原菌の発生を制御する性質があります。
粒の大きさは大粒~細粒まで分かれており、粒の大きさごとに排水性や保水性が変わり、硬さにもいくつか種類があります。
粒状のベージュ色、黄褐色の土であり、見た目は赤玉土とよく似ています。
通気性・保水性に優れており、赤玉土よりも崩れにくく酸性度が強いです。
軽石
軽石は、火山活動によって放出されたマグマが急冷されてできる多孔質の岩石です。
水はけ良く、通気性も高いですが、脆く衝撃で割れやすい性質をもちます。
鉢底石、土壌改良材として使用されます。
日向土(ボラ土)
日向土は軽石の一種で水はけがよく、通気性が高いです。
日向土の特徴は硬さです。
通常の土だと長期間使用すると粒が崩れるため、時間の経過とともに排水性が低下しますが、日向土は長期間使用しても粒が砕けないことから、くり返しの使用が可能です。
日向土は「ボラ土」とも呼ばれていますが、この二つの違いは乾燥度合いです。
一般的に乾燥しているものを「日向土」湿り気があるものを「ボラ土」と呼びます。
パーライト
パーライトは黒曜石や真珠岩などのガラス質の火山岩を高温で加熱処理して膨張させた砂礫のことです。
多孔質で、保水性、通気性、排水性に優れています。
培養土に混ぜて、通気性を改善し根腐れを防ぐ効果があり、無菌のため種まきや挿し木用の土として使用されます。
バーミキュライト
バーミキュライトとは酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムを主成分とする人工的につくられた土です。
別名「蛭石」とも呼ばれており保水性・保肥性に優れています。
断熱性や保温性にも優れており、植物が成長しやすい環境を整える上で欠かすことができません。
また、無菌であるためきれいな環境を必要とする挿し木、種まき用などの土には適しており、パーライトとともに水耕栽培の土としても使用されます。
土の配合割合
土の配合は、育てる植物や目的に合わせて様々ですが、基本となるのは赤玉土7割、腐葉土3割が「黄金比」とされ多くの植物に適しています。
また鉢植えの土は定期的な交換が必要で、2〜3年に1回を目安に植え替えるのがおすすめです。
基本用土として、赤玉土、鹿沼土がよく使用されます。
その場合の配合割合を下の表にまとめました。
| 基本用土 | 育てる環境 | 配合割合 | 特徴 |
| 赤玉土 | 王道培養土 | 赤玉土60~70%・腐葉土30~40% | 多くの植物が成長しやすい環境 |
| ベランダなど乾燥しやすい環境 | 赤玉土80%・バーミキュライト20% | バーミキュライトの保水性が乾燥から植物を守ってくれる | |
| 室内で観葉植物を育てる | 赤玉土70%・ピートモス30% | ピートモスが無菌であり衛生的 | |
| 鹿沼土 | 酸性を好む植物 | 鹿沼土60%・腐葉土40% | 赤玉土と比較すると酸性 |
| 室内で植物を育てる | 鹿沼土20%・赤玉土50%・ピートモス30% | 水はけがよくなり、根腐れしにくい |
【まとめ】鉢植えに水が染み込まない原因を知って園芸を楽しもう

水が土に染み込まない原因や土の性質を知ると、より園芸を楽しめます。
初心者さんはライフスタイルに合った植物と土を選ぶと、始めやすいです。
植物に合わせた土選びをして、植物との生活を楽しみましょう。



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